2021年11月読書会レポート『おじいちゃんとの最後の旅』

Ⓒおじいちゃんと最後の旅
Ⓒおじいちゃんと最後の旅

2021年最後の読書会。

11月の1冊は『おじいちゃんとの最後の旅』

(ウルフ・スタルク/作 菱木晃子/訳 キティ・クローザー/絵 徳間書店)でした。

 

図書館員のレポーターの方が丁寧に解説してくださったおかげで、内容がぐっと深まり、参加者一同感心することしきりでした。

□とても読みやすかった。

イラストもスウェーデンを想像させるものでとても良かった。

22万個もの島があるというスウェーデンならではで、このように住んでいる老人がいるんだろうなあと連想する話。

 

□主人公のおじいちゃんとおなじような老人が、自分が医療従事者の時は、たびたびおめにかかった。看護師に悪態をつき「家に帰らないと畑が駄目になる、」と騒いだので、いったん家に帰ってもらう作戦を立てて実行すると嘘のように暴言を吐かなくなった。

ウルフやアダムのように、おじいちゃんに寄り添って策戦を立て、家に帰れる算段をしてくれる人がいるのは、すてきなこと。一見、無理解に見える息子(ウルフの父)も、最終的にはおじいちゃんの事を理解していたのでは?などと興味深く読んだ。

 

□人物一人一人が丁寧に描写されていて、理解が深いなあと感じる。

父の衰えを見たくないというウルフの父のことも、よくわかる。ラストの読後感は独特なものがあり、静かな日常に戻った後、なにかが変わっているという気がする。

よい本を紹介してもらったなと思う。

 

□今年の読書会の中で、もっとも印象に残る好きな作品だった。ドラマチックな事が起こるのではなく、日常に戻っていくのだが、ちゃんと成長している。

レポーターのおかげで、より深く理解できた。他の作品もよみたい。

 

□レポーターのおかげで、ただ読んだだけではわからないところが見えてきた。スウェーデン人の子ども感も踏まえて、読み返したくなる。日本の子どもが、ウルフのように、おじいちゃんやおとうさんの事を知りたいと思うかなあとふと思った。

  

□おじいいちゃんの話口調が好みです。(翻訳のうまさ?)

 

□繰り返し読み楽しめる身近な世界が描かれているなあと思う。

自分のことを考えても、嘘をついた時のことはよく覚えている。

嘘をついてから、急に心配になるという感情を思い出した。

この本に描かれているあたたかな悲しみは国に関係なくわかり合える世界だなあと思う。

 

□自分の祖父を思い出した。やりたい放題なわがままな祖父だったのに、みんなに愛されていた。

本にでてくるココケモモのジャムの話を、ウルフはきっと大人になって思い出すんだろうなあと思った。

 

□挿絵が好き。他の作品も読んでみたい。

 

□自分の島にある家から、夕陽を見るシーンが印象的。

病院から逃亡するのを助けるアダムの存在に注目した。アダムは直接血縁関係もなくななめの関係。彼がいて、この脱出劇は成功する。いわばキーパーソンである。

 

□老人問題には、必ず死の問題がついてくる。スタルクは、他の作品でも、その書き方が実にうまい!まさに、あたたかな悲しみ!スウェーデンの、子ども感もこの作品にはよく出ていて、学ぶべきことが多いなあと感じる。

 

□レポートのすごさにめまいがした。スタルクという作家を初めて知った。スウェーデンの文化庁というところが、すごいところだなあと思う。

 

□逃亡を手助けしたアダムが良かった。自分が、おじいいちゃんおばあちゃんという世代になり、こんなにふけたおばあちゃんじゃないなあと思ったりもした(笑)

  

□祖父母と孫は、ワンクッションあるすてきな存在。この本を子どもたちにもすすめたい。

 

□レポーターがわざわざ買ってきてくださったコケモモのジャムのおかげで、味がわかりありがたい。

 

□このおじいちゃんは憎めないので、好き。おくさんの葬儀の時は、どんな汚い言葉をはいたのかなあ。12章のところで、ウルフが、父親に真実を話してしまうが、それを嘘にしてしまう場面が好き。

 

□この他にも、何冊か彼の作品を読んだが、あまりに破天荒でついていけないところもあるが、自分の死のとらえ方が変わったと感じた。訳者の力も感じる。

  

□スウェーデンの福祉政策について、考えていたが、児童文学を読むことで、いろいろ知ることができた。

 

□父が弱っていくのを見たくないという気持ちは、よく理解できる。フィクションのよさを感じる作品。わたしは、アダムがかっこいいいなあと思う。心臓肥大のおじいちゃんを、坂を上らせる場面はハラハラした。

 

□コケモモのジャムがおじいちゃんにとって命の糧だったり、小道具の使い方がすてき。

 

□はじめて読んだ時は、印象に残らなかったけれど、表面的な脱出劇より、心の内面の動きに注目して読み直すといろいろなことが、見えてきた。 

 

 

作者が日本に来ることが決まったとき、是非お招きしたいと考え、全ての作品を読み直しました。

当日の作家のスピーチも、低くよく通る声で、とても話し上手でした。自分の身の回りに起きたことを、上手にお話に取り入れ、文学に昇華させていると感じました。その後、74歳で亡くなったときも、延命治療は一切せず、亡くなったと聞き、あっぱれな人生だなあと深く納得したものです。

 

レポーターがその時のスピーチを掘り起こし、みなさんにわかりやすく伝えてくださったことに感謝!