エロール・ル・カイン展へ行ってきました


横浜そごうで開催している

エロール・ル・カインの魔術展へ行ってきました。


エロール・ル・カインといえば、

数々の美しい絵本を描いている作家。

小さい頃から「とてもきれいで特別な絵本」と刷り込みで記憶されているので、原画を見るとことさらにありがたい気持ちというか、自然と恭しい心持になります。


近年ではさくらももこさんが『憧れのまほうつかい』というエッセイでル・カインのことを絶賛していて、読みながら大きくうなずいてしまいました。


ル・カインは47歳という短い生涯でしたが47冊もの作品を残しています。

私の記憶では「ひたすらに美しい絵本描く人」なのですが、作品全体を見ていると以外にもふり幅の多い画風で緻密で美しい作品から可愛らしいものまで、色々な絵本を残していたことがわかります。

©いばらひめ
©いばらひめ

今回は首都圏初の大規模な展覧会という事で、いろいろな絵本の原画が沢山見ることができました。

特に惹きつけられたのはフレームのイラスト。ただ美しいだけではなくて、フレームにも物語のモチーフが散りばめられています。たとえば、いばらひめだと、城に絡まるいばらのようなモチーフに、眠らされている召使いや動物達が散りばめられていたり・・・枠だけ見ていてもストーリーを感じることができるなんてすごい!!


ル・カインは「借り物上手のカササギ」と呼ばれることもあったそう。

カササギが美しく光るものをつねに貪欲に巣に運ぶ性質が、様々な美術様式を巧みに組み合わせ取り入れるル・カインの画法のようだという事でそのように呼ばれていたそうです。

その言葉の通り、彼の絵には東洋も西洋も関係なく、彼のアンテナにひっかかった美しいものに溢れています。


シンガポールに生まれ、幼少期をインドで過ごし、その後イギリスにわたったことは彼の作風に大きく影響しているのでしょう。

今回、展示されていた「GRANDMA」という絵は、イギリスの作家、画家のエッセイが収録されているPuffin’sPleasueに収録されており、ル・カインが祖母の思い出を描いた作品。私はこの中に、借り物上手で、多文化を巧みに自分の作品に取り入れる彼のルーツが集約されているように感じました。

絵の真ん中、丸い枠の中には東洋風の部屋の中に、西洋風の服装をした祖母が座っており、部屋の中には本や人形、ドレスなどがあります。そして、枠の外側には草花とともに、オズの魔法使い、ハーメルンの笛吹、ラプンツェル、アラジンなど物語の登場人物が配されているのです。こんなにたくさんの要素が入っているのに、何かが突出することなく調和していて、「ル・カインの絵」になっているところに、とても感心しましたし、「ル・カインらしさ」を再確認した1枚となりました。


最近、展覧会で流行っているらしい

「撮影スポット」

今回も展覧会の中ごろにありました。

『美女と野獣』のページが再現されていて、ここで一緒に写真が撮れるようです。

・・・ル・カインの作品の一部になる勇気はとてもなかったので(!)

私は一緒に写真を撮りませんでしたが、こういうのもイベント的な楽しさのひとつなんでしょうか・・・?

展示の最後には、今まで出版された彼の絵本の表紙を見ることのできるコーナー、

また絵本が閲覧できるコーナーがありました。

みなさん大変熱心に(特に大人が)絵本を読んでいらっしゃいました。

それにしても絵本の表紙で並べて見ると、改めて多彩な作風に舌を巻きます。

日本では未訳の作品もまだまだあるようです。


©三つのまほうのおくりもの
©三つのまほうのおくりもの

今月のちいさいおうち通信でも紹介していますが、

『三つのまほうのおくりもの』(ほるぷ出版)が、

つい最近になって出版されましたので、

もしかしたら今後も何かしらの作品が、翻訳絵本として

出版されるかもしれないですね・・・どうでしょう?

少なくとも、今、出版されている絵本は

どうにか絶版になりませんように!

ちなみに・・・私がル・カインの作品の中で特に好きなのはこの2冊。


『おどる12人のおひめさま』(ほるぷ出版)は、

これでもかっと描き込まれた絵に魅了され

お姫さまのドレス、背景、枠のひとつひとつをいつまでも眺めていたくなる作品。

小さい頃は、まずお話を読んでもらった後に、絵本を抱えて

お姫さまひとりひとりのドレスの柄、デザイン、

それぞれのベッド、乗っている船のデザイン・・・等々、

隅々までなめるように見たという記憶があります。

私の中では、ル・カインといえば、まず思い浮かぶ作品でもあります。


『フォックスおくさまのむこえらび』(ほるぷ出版)は、

大人になってから読むとお話自体は荒唐無稽というか、

変わったお話なのですが、昔から妙に好きな絵本で何度も読み返しています。

そして、出てくる動物がとても魅力的。

「かわいい~」と、すぐに飛びつける愛嬌のある可愛さの動物ではなく、

一癖も二癖もありそうでちょっと色っぽい動物達に

小さい頃は少しドキドキしたものです。

未亡人になったフォックスおくさまの前に次々に現れる求婚者・・・

そのハチャメチャなアピールが存分に語られたカラーの絵の次のページで、

その求婚をことわられしょんぼり帰っていく求婚者が白黒で描かれており、

そのターンが何度か続くというのは、いま読んでも「次は?次は?」と

ワクワクする構成になっています。


ル・カインが絵本のイラストについて

「子どもが見るたびに新しいものが発見できるように物語にまつわる

細部がふんだんにあるイラストレーション」

「ユーモアでドラマチックで物語をち密に強調し拡張し、若い想像力を刺激するものを与える大胆でシンプルな絵」

を心掛けていたというというのを読んで、とても感動したのですが

そのことが、とてもよくわかる2冊でもあります。


展覧会オリジナルのクリアケースやマグネット、メモパッドなど

ついつい欲しくなるグッズもたくさんありました。


「おどる12にんのおひめさま」の枠絵を施したメモパッドという

私の好みにストライクなものもあり、大喜びで購入しましたが

もったいなくて使えそうにありません・・・

しばらくは眺めてにやにや楽しみたいと思います。