2021年読書会『オール・アメリカン・ボーイズ』

Ⓒオール・アメリカン・ボーイズ
Ⓒオール・アメリカン・ボーイズ

4月の1冊は 『オール・アメリカン・ボーイズ』

(ジェイソン・レノルズ&ブレンダン・カイリー/作 中野怜奈/訳 偕成社)でした。

 

今回は新しい2名の参加者が加わってくれました。

タイムリーなテーマの本でもありますし、皆さんの熱い感想が聴けた会になりました。

 

 

 

***『オール・アメリカン・ボーイズ』あらすじ***

黒人の少年ラシャドはポテトチップスを買いにいった店で万引きを疑われ、白人の警官から激しい暴行を受け入院する。それを目撃した白人の少年クインは、その警官が友人の兄のポールだと気づき現場から逃げた。事件の動画がテレビやネットで拡散し、ラシャドとクインが通う高校では抗議のデモが計画され、2人はそれぞれの人間関係の中で、揺れ動く自分の心をみつめることになる。

事件の当日からデモが行われるまでの8日間を、黒人作家のレノルズが黒人の少年ラシャドの視点から、白人作家のカイリーが白人の少年クインの視点から交互に描き、まさにアメリカの今を映し出す感動作。(出版社紹介より)

 

現在の社会についての問題提起としてとらえている方がとても多く、

現状を憂慮したり、更なる問題点を挙げる方が多かったです。

 

〇あまりに根深い黒人差別の問題。社会構造の複雑さや偏見におののく思いがする。

〇人種問題のある世界のことを考えると、個人の問題ではなく、もっと大きな問題に、突き当たるような気がする。人の心はどうあるべきかというような…

〇こういった問題が、自分には関係ないはもう通じない。アジア系の人への差別もアメリカでは、激しくなっている。

〇このような問題に直面した時にどんな言葉を、子どもにかけてあげられる大人であるべきかを考えると、重い本だなと思う。

〇アメリカの高校生は暴力がすぐ身近にあり、すぐ近くに死が存在している。日本よりも切羽詰まったところで生きていると感じた。

〇マスメディアやSNSが、問題をいっそうわかりにくくさせている面もあると思う。こういう問題に、声をあげないのは悪という流れになるのは怖い気がする。いったん、立ち止まって考える事も大事なのでは

 

…更に「差別」ということについて、自分の体験や感じていることを話してくださった方もいました。

 

〇高校時代に中国に行った際、日本人に対する侮蔑的な言葉を聞いた。

「はだいろ」という言葉も、無意識に使っているが、どうなのかなと感じてしまう。

〇最近、読んだ本の中に「差別的な発言をする人は、自分の存在に対する自信や誇りがない人なのでは」という文があり、自分の心のありようが、差別や偏見につながるのではないか

と思った。

 

Ⓒワンダー
Ⓒワンダー

このような重いテーマの作品でありながらも、読みやすかったという感想が多く

2人の作家が書いているという事にも注目が集まっていました。

 

〇心情、出来事が丁寧に書かれていて、好感が持てる。

〇テンポよく読めた。白人と黒人の作家が二人で書いたところがすてき。一気に読めるので、高校生にすすめたい。

〇一人一人が、丁寧に描かれている。母親の気持ちにも共感できる。中高生にすすめたい。

〇緊迫した中にも、ほっとする場面がいくつもあり、2人の作家が歩み寄りながら書いた

と思われる。そのことが、一つの希望。

〇映画を見ているような、臨場感があり、テンポがよい。アメリカの高校生の日常が、よく書かれていると思う。

 

などなど……色々な年代の方が読める本ではありますが、改めて、子ども(YA世代)に読んでほしい作品だと思いました。

個人的には。若者のノリ、しゃべりのリズムを文体にのせている翻訳がいいなあと感じました。白人、黒人ともに同じ言語だから、内面に直接触れることが出来るのだと思います。

『ワンダー』(R・J・パラシオ /著 中井はるの/訳 ほるぷ出版)などと同様に、文学でないと表現できない世界だなと……。

 

 

誰に感情移入をして読んだか、誰に注目して読んだかというのは

人それぞれでしたが、特に名前が出た登場人物を上げると…

 

〇黒人差別というものが、日本人には、あまり身近ではないと思っていたが、ラシャドに、感情移入して読んだところ、母親が「どんな人になりたいかよく考えて」といったことが、心に響いた。

〇クインの心の移り変わりに注目して読んだ。親友の兄の暴力を自分の事として、次第に考えるようになっていく過程が、丁寧に書かれているなと思った。

〇「知らないことで誰かを傷つけて、それが何を意味するかもわからずに中立でいようとしたことが何度あるのか…」(P.330)というクインの言葉が、心に残った。

〇ポールのことが気になる。彼の日常がもう少し知りたかった。

〇ポールが何を思っていたのかが語られていないのが、気になる。

〇スプーニーがキーパーソンという気がする。

 

などなど。

 

 

人種差別を描いた他の作品を紹介してくれた人も多く

 

〇『グリーン・ブック』(映画)

〇『私はあなたのニグロではない』(映画)

〇『アラバマ物語』(映画)

〇『チョコレート・アンダーグラウンド』(アレックス シアラー/著 金原瑞人/訳 求龍堂)

〇『あなたはそっとやってくる』(ジャクリーン ウッドソン/著 さくまゆみこ/訳 あすなろ書房)

 

等の作品名が挙がりました。

 

今回の作品とは、少し違うテーマではありますが

『パトリックと本を読む 絶望から立ち上がるための読書会』(ミシェル・クオ/著 神田由布子/訳 白水社)もぜひ読んでほしい1冊。

貧困地帯の底辺校で、読書を通して、文学や、歴史を押した著者の記録で読みごたえもあり、非常に考えさせられる内容です。

 

『オール・アメリカン・ボーイズ』で描かれているテーマは現在進行形で簡単に解決できる問題ではないですが、まずはお互いの立場に立って物事を考えてみるということを教えてくれているような気がします。