6月の1冊は『ソロモンの白いキツネ』(ジャッキー・モリス /作 千葉茂樹/訳 あすなろ書房)でした。
まずはリポーターのAさんのすてきなレポートに参加者一同感心しきり……
・リポーターの力で、話の内容がよくわかった。
・レポートのおかげで、藍色、紺色、オーロラの色、キツネの白、全て印象的な色あいが浮かぶ本。
という感想も上がったほどです。Aさん、ありがとうございました!
〇訳者の千葉茂樹さんは、以前松本にお招きしたことがあり、面識があったので、今回の読書会のためメールでこの本のことを伺ってみました。
千葉さんは、編集者の方からこの本を受け取り、短いけれど大事なことがきちんと押さえてある本だと思ったそうです。
また、原初のイラストを木内さんのイラストに変更したのは、千葉さんの希望とのこと。
枚数は少ないが、雰囲気がよく出ていると千葉さんも思っていらっしゃるそうです。
〇物語の印象について
・さみしさによりそう一遍の詩のような物語だと思った。
・詩情豊かな宝石の小箱のような作品だと思った。
・神秘的で美しい世界……
・いろいろな人が幸せになってよい本だなと思う。
また
・この世界観が好き。星野道夫を思い出す。
・キツネとアラスカ。雪の匂いのする本。星野道夫に通じる世界…
と星野道夫さんの世界観を想起された方も複数いらっしゃいました。
・同化政策など、社会的な問題をいろいろな問題を含んでいる本。
・1回読み、もう一度読んで、かなしいなあと思った。
・深読みして初めて印象にふかくのこる本だと思う。
……物語の美しさと共に、テーマの奥深さに言及される方が多かったように感じました。
〇本の形態・対象読者について
・子どもたちにこの薄さだったら届くかな、と思う。文字の力とお話の力を感じられる作品
・短くて薄いけど内容は「本を読まない子にもどうぞ」というわけにはいかないかなと思う。
……というように、対象読者については様々な意見がありました。
また、少しかわった版型をしていること、原書とはイラストが異なるということから発展して、
・絵本というイメージで読んだ。イラストが全部夜。最後のみオーロラ。
・イラストも、作者のものだと思っていた。木内さんの絵はあっている。
・イラストを、替えることを作者がよく許可したなあと思う。
・読み終わって、あれ、これで終わりかあと思った。この余白はなんだろうと考えた。この余白は、作者が絵を描く人だからではないか。
…という感想も出ました。
〇特に印象的だった言葉を挙げてくださった方もいました。
・P34 「子どもだからって、人生が気楽で楽しいなんてことはない」というところに、共感した。
・P10 「心が遠くにさまよいださないように気を付けている」という文章にはっとした。
また、複数の方が「ピーナッツバターサンド」が印象的だったようで…
・ピーナツバターサンドを食べたくなった。
・キツネがピーナツバターサンドを食べるのにもびっくり。
・ピーナツバターサンドは、アメリカの少年の大好物だとスヌーピーの漫画などで知った。
という感想も。
〇父と子の姿について
・父と子が歩み寄っていくそのきっかけになる父親の友人の存在も大きい。
・この父と子どもが歩み寄るために3週間という時間が必要だった。
日本では無理だと思うのでそれがとれるのは、うらやましい。
…といった感想もありました。
また、その時に大きな役割を果たした白いキツネについては
・白いキツネに導かれて家族がまとまっていくところがすごいなあと思った。
・白ギツネは、母からの遣いだったのでは?
という意見もありました。
〇物語全体を通して受け取ったメッセージ
・悲しみはさけたいものではなく、対峙しなくてはいけないととらえている。
・居場所は必ずある。よりそわないし、突き放さない。
・置かれた場所でなく居場所は自分でさがしてよいんだなあ。と感じた。
・「自分の居場所」というテーマは、だれにも通じるテーマだと思う。
…などなど。
発展して「本」や「言葉」について想いを発展させて
・本の居場所について考えた。この世界は言葉ではあらわせないものにあふれている。
でも、おばあちゃんからの手紙を代筆してくれた人がいてくれたように、文字がおもいを伝えてくれることもある。
……という感想も出たことが印象に残りました。