『りこうなおきさき』

Ⓒ『りこうなおきさき』
Ⓒ『りこうなおきさき』

5月26日の朝日小学生新聞・朝小ライブラリー『名作これ読んだ?』で

『りこうなおきさき』(モーゼス・ガスター/文  光吉夏弥/訳  太田大八/絵)をご紹介しました。

今回は、新聞のスペースでは書ききれなかったあれこれを書き留めておこうと思います。新聞をご覧になれる方はぜひ併せてご覧ください。

 

 

私は、小さい頃からむかし話が大好きで…特に外国のむかし話が大好きでした。 今回、とりあげた『りこうなおきさき』は「岩波おはなしの本」というシリーズの中の1冊。このシリーズは他にも魅力的なものが揃っていて、私のお気に入りでした。残念ながら現在は品切れのものが多いのが心から残念ですが『まほうの馬』(ロシア)、『ものいうなべ』(デンマーク)、『天からふってきたおかね』(トルコ)、『トンボソのおひめさま』(カナダ)、『かぎのない箱』(フィンランド)などなど、バラエティー豊かなラインナップだったのです。

 

このシリーズのお話を次々に読んだことで、ひとくくりにむかし話となっていても、国によっていろいろなお話があるんだな~というのを子ども心に思ったものです。そのまま、お話を楽しむのはもちろんですが、昔ばなしを通して、そのお話がうまれた国へ思いを馳せるというのは、なかなか「通」な楽しみ方かもしれませんが‥‥‥

ずっと昔から、人々に語り継がれてきただけあって、多くの昔ばなしは大人になったいまでも夢中になって読んでしまうほど、おもしろいお話ばかり。ちょっと前の時代のお話…とかでもなく、とーってもむかしむかしのお話というのが、かえって心地よく、どんなに突飛で強引な展開でも「まぁ、昔ばなしだもんね」と納得してしまえるし、流行などには左右されない骨太な面白さがむかし話にはあるんです。

舞台や登場人物は違えど、似たような筋のものがむかし話にはたくさんあります。お話の筋は似ているからこそ、細かいディテールにお国柄や文化、風習が色濃く反映されているところがとても興味深いですし……途中で展開はある程度予想がついたとしても全くがっかりすることなく、最後まで楽しむことができるのも、魅力のひとつだと思っています。

 

私の子どもの頃の愛読書のひとつに『完訳グリム童話』(小澤俊夫/訳 ぎょうせい)があります。

小学生の頃は体調が悪くて学校をお休みした日は眠るのに飽きると、こっそり布団の中でこの本を読むのが密かな楽しみでした。風邪をひいたりすると(今日はたっぷりグリム童話を読める!!)と内心ワクワクしていたくらいです。

 

そんなふうに何度も読んでいるうちに、他の色々なお話を読んでは「これはグリム童話のあのお話ににているかも!」とか「このお話は、あのお話とこのお話が合わさったみたいなお話だな~」とか分析しては、両親に自慢げに報告していたものです。両親が面白がってほめたたえてくれたこともあって、ますます夢中になって読み込んでいったことが懐かしいです。‥‥‥子どもの頃の集中力と記憶力ってすごいですねぇ(まるで他人ごとのようですが、我ながらあの情熱はすばらしかったなぁと振り返って感心してしまいます)

さて。『りこうなおきさき』に話を戻します。

この本にはルーマニアのむかし話が13篇入っています。

その中にもグリム童話やイソップ物語のようなストーリーのものがありますが、そっくり同じという訳ではなく、その微妙な違いにこそ、その国ならではの雰囲気を感じられるような気がします。

王さまやお姫さまに騎士や魔法使い、動物や鳥がたくさん登場する美しいお話を通して、ルーマニアという国を想像するのは、とても楽しい時間です。

 

『りこうなおきさき』の裏表紙
『りこうなおきさき』の裏表紙

また、表紙をはじめ、中のイラストも味わい深くおしゃれでとても素敵なんです!

カラフルな表紙とは一転、中のイラストはおさえた色味でやや渋いのですが、想像力をかき立ててくれて、これがまた絶妙。本当に洒落ていて、大好きです。

ずーっと海外の画家さんのイラストだと思っていたのですが、最近になって太田大八さんのイラストだということに気がつき、びっくりしました!!子どもの頃は、このイラストからルーマニアの香りを感じ取って想像を膨らませていたのですが(笑)まさか日本人の描いたイラストだとは…改めて太田さんのイラストのファンになってしまいました。ぜひ、お話と共にイラストも楽しんでほしいです。