2023年4月読書会『七つの人形の恋物語』

©七つの人形の恋物語
©七つの人形の恋物語

 

4月の読書会の1冊は

『七つの人形の恋物語』

(ポール・ギャリコ/著 矢川澄子/訳 王国社)でした。

 

※今回の読書会のまとめも参加者のHさんにお願いしました。

〈この本について〉

舞台はパリ。夢破れ絶望に打ちひしがれた少女がひとり向かうのはセーヌ川。すると、少女に声をかけるものがあります。それはなんと人形劇の人形でした…思いがけない運命の出会いから物語はドラマチックに展開していきます。

『七つの人形の恋物語』は出版後も世界中で映像・舞台化され、1953年には映画『リリー』の原作として公開されました。日本では1955年に河出書房(大島辰雄訳)、1978年には角川書店(矢川澄子訳)から出版されています。

 

〈レポーターの発表をうけて〉

今回のレポーターIさんは、人形劇が好きだったことがきっかけで『七つの人形の恋物語』を読み始めたそうです。

ロシア人形劇の公演を見に行かれた時の思い出を語る様子はとても楽しそうで、なじみのなかった人形劇に興味がわいてきました。

貴重な資料の中には、日本で1979年にアニメ化された『トンデモネズミ大活躍』のレコードが!当時のアニメを覚えている参加者もいて、ギャリコの作品が世代を超えて愛されてきたことを実感しました。

ポール・ギャリコ(1897-1976)は、ニューヨーク生まれのアメリカの作家。父はイタリア人でピアニスト、母はオーストリア人。作家になる前はニューヨーク・デイリーニュースの国民的な人気記者として活躍しました。

物語の名手といわれるギャリコが描き出すファンタジーの世界は繊細でダイナミック。まるで人形劇の舞台が目の前で繰り広げられているかのように動き出します。

七つの人形の存在とは?読者によってとらえ方や関心はさまざま。矢川澄子さんの名訳がこの作品の魅力を引き立てています。

 

 

〈参加者の感想〉

 

かつて人形劇団でアルバイトを経験したことがあるので、裏側が懐かしい。

人形劇の面白さがよく表現されている。。

かつて海外の人形劇といえば、「パンチとジュディ」「ガスパールぼうや」などが有名で、大人向けの人形劇が主流だった。日本は子供向けの印象が強い。

この物語にはギャリコの新聞記者というバックグラウンドが活かされている。

物語の作者と、人形は、深く結びついていると感じる。たとえばターシャ・デューダーは生きているように人形の世界をつくりだしていたし、シャイで吃音だったルイス・キャロルは人形劇を家族と楽しむ事で、思いを表現していた。

 

かつて、プロの人形劇団に在籍していた。

人形劇が魅力的な理由は…人形が魂を吹き込む対象だから。自分では言えないようなことを人形に言わせる、という一面もある。この物語は、人形がその存在を超えて動いているような感じをもった。

一人の男性(ミシェル)が崩壊寸前になるのではないかと、ハラハラした。土壇場でハピーエンドになりほっとした。

矢川澄子さんの翻訳が怖い話を上品にまとめている。

レポーターIさんのポール・ギャリコへの愛を感じた。

 

本の表紙の絵が怖いので、カバーをかけて読んだ。暴力的に思える場面があり気になった。

かつて芝居をやっていたことがある。現実を生きるうえで自分ではない人物を演じることは現実逃避ではなく価値のあること―いい経験をした。

だれしも相手によって見せる顔が違えば、相手が受け取るその人のイメージも一つではない。正反対の印象を持たれることもある。芝居をやっていた時感じたことを、この本を読んで思いだした。

 

人形とは魂が宿る存在だと知り、衝撃を受けた。子どもの頃見た人形劇には興味が持てなかった。この物語に出てくるような芸術的で大人向けの人形劇が見てみたい。

ミシェルは多重人格じゃないかな。ミシェルとムーシュの関係について、矛盾や感情の複雑さ、相性が良くないのでは…など、気になるところがあった。二人の行く末が気がかり…

ミシェルは怖いが危険な魅力を感じる男性。

パリが舞台というのは、当時のアメリカから見たパリへの憧憬かな?どんでん返しがうまい。

専門的にみると子どもの本というよりはYAだろう。

秋田には猿倉人形芝居がある。子どもの頃は人形に人格があるように思っていた。

レポーターIさんの人形劇への愛を感じた。

 

詩や戯曲のようだった。音楽家の父の影響もあるのかな。舞台化や映像化されたのも納得がいく。ムーシュが人形と出会う場面から面白くなって物語に入り込めた。

詩的で芸術性がある。(リメイク前の)『ポセイドン・アドヴェンチャー』は面白くて好きな映画だし、『トンデモネズミ大活躍』もアニメで見た記憶がある…(読書会で)作者が同じポール・ギャリコだと知り、身近に感じた。文庫版の解説がロマンチック。(矢川澄子さん)

ミシェルは憎らしいが人形の人格に奥行きがある。

定点的な読み方ができない。七つの人形は形を変えたひとりの人間の内面を表しているようで、限りない心の奥行きを感じた。もっとも助けたくなる人は助けたい姿をしていない。

 

読書会で紹介されなければ、手に取らない本。多重人格という紹介文に怖さを感じて、ひいてしまう。本の表紙の絵も怖い。今までに読んだことがない不思議な物語。人形に本音を言わせているようだ。児童書ではないと思う。

人形劇というと、『プリンプリン物語』や『里見八犬伝』、『ひょっこりひょうたん島』など子ども向けの作品を思い出す。現在のCGより人形劇のほうが面白かった。

この作品は別ですね。

 

人の心の奥行きを感じる深い作品。

ムーシュのキーワードは無垢。ミシェルとムーシュは唯一無比の関係で、ロマンチックな物語。

100年以上も前の作品なのにすぐ入り込めたのは、ムーシュの境遇やブルターニュの思い出とパリの情景が語られる印象的な場面があるから。

1番のお気に入りは人形のレイナルド-真人間だと思う。

かつて見た文楽を思い出した。人形の色気や不思議でスピリチュアルな、場を超えた力-人間を超えた力のようなものを感じた。

児童文学ではないと思う。うまくすすめればYAでも読める。

心から楽しめる物語は、人生を味わい深いものにしてくれます。だれもが人生という舞台の主役。毎日が物語の1ページ、舞台の1場面だとしたら?

 

 

この本を読んだ皆さんはどんな感想をお持ちになったでしょうか。