今更のご報告ですが……本年度も朝日小学生新聞の朝小ライブラリー『名作これ読んだ?』のコーナーで本を紹介することになりました。
昨年に引き続き、今年もよろしくお願いします。
こちらのブログでは、新聞の記事内では書ききれなかったあれこれ・補足やこぼれ話などを、つらつらと書き留めていきますので、新聞を読んでいる方もそうでいない方も、気軽にのぞいていってください。
さて、今回の本題です。
5月25日の新聞では、『パンダのポンポン』(野中柊 作/長崎訓子 絵/理論社)をご紹介しました。
パンダのポンポンのシリーズは美味しくて楽しくってどれもおすすめです。
『パンダのポンポン』が出版されたときに「え!フランクザッパのワイワイの本が出るの?!!でも名前違う!でもでも野中柊さんが書いてる?同じパンダ?なに?どういうこと??」とびっくり&大騒ぎしたことを覚えています。
『パンダのポンポン』の主人公はポンポンですが、作者の野中柊さんの書いた別の作品に、ポンポンによく似たパンダのワイワイ(よく読んでいくと違いがわかりますが)が出てくるのです。
そして、私は『パンダのポンポン』が出版されるよりも前にあった作品の『フランクザッパ・ストリート』と『フランクザッパ・アラモード』がとてもお気に入りだったので、反射的にそんな反応になってしまいました。
絵本や児童文学は、ずっと好きで常に私の身近にある存在でしたが、大人になるにつれて、当然、絵本や児童文学以外の本にも興味が出てきました。中学生くらいから大学生くらいまでが、いちばんいろいろなジャンルのものを読んでいた時期だと思います。特に中高生の頃は、ちょっと背伸びしたい願望もあったので、市立図書館に行っては自宅の本棚にもちいさいおうちでも扱っていないような、いわゆる一般書というか大人の本のコーナーに入りびたっていました。
その頃に小説以外の本……エッセイなどの面白さに初めて触れて、エッセイばかりを読んでいた時期もあります。特に食べ物・映画・ファッションにまつわるエッセイがお気に入りだったのですが、その中でも野中柊さんの『食べちゃえ!食べちゃお!』(野中柊 著/幻冬舎)は大好きで何度も繰り返し読んでいた本のひとつでした。
『食べちゃえ!食べちゃお!』は、(これってエッセイではなく小説なのでは??)と思ってしまうほど、私にとっては現実離れしたおしゃれ空間が広がっていて、読んでいるととてもテンションのあがる本でした。
作者と作者のパートナーの恋愛や生活、そこに関わる食べ物が描かれています。それがとっても素敵で、読んでいるうちに、自分もちょっと大人になったような&おしゃれになったような錯覚に陥っていました。そして、なんといっても出てくるごはんがどれもとても美味しそうで、これまたおしゃれ!食べたことのないものもあったけれど、ちゃんと巻末にレシピがついているので、そちらも熟読してどんな味か想像するのも楽しい時間でした。図書館から何度も何度も借りて読んだという中高生時代の思い出と共にある、印象深い1冊なのです。
その後、大学生になり東京で一人暮らしを始めるようになり……それまで、私は欲しい本は漫画や雑誌以外は、ほとんどちいさいおうち経由で手に入れていたのですが、そこでほぼはじめてといっていいくらい、本屋で本を買うという経験をすることになります。
特に、父が仕事で上京するときは必ずどこかの大型書店で待ち合わせをすることが多く、そこで父が自分の読む本と一緒に、私にも1冊か2冊、好きな本を買ってくれるのがお決まりでした。
その時に、いちばん最初に選んだのが、この『食べちゃえ!食べちゃお!』のハードカバーだったと思います。
その後、今度はエッセイではなく『フランクザッパ・ストリート』(野中柊 著/筑摩書房)という小説が出ていることを知り、早速こちらも手に入れました。こちらは小説なので、エッセイよりも内容も思い切りぶっとんでいて、大人のファンタジーという感じ。
個性豊かな、濃すぎるキャラクターの登場人物たちに、相変わらずおしゃれで美味しそうな食べ物描写、そして巻末にはレシピつき……と、『食べちゃえ!食べちゃお!』の小説版を読んでいるようでワクワクしました。この本も、その続編の『フランクザッパ・アラモード』(野中柊 著/筑摩書房)も、すぐにお気に入りの本になりました。
そんなこんなで、野中柊さん×食べ物の本には個人的に思い入れが強く『パンダのポンポン』は、読む前から既に(絶対にこれは私の好きなやつだ!!!)と確信していたのですが、実際に読んでみたら期待を裏切らない面白さ。
フランクザッパ・シリーズの世界に繋がっているような舞台設定、個性豊かな濃ゆいキャラクターもたくさん出てきてにぎやかで楽しくて、とっても軽快なストーリーに読み終わってにっこりしてしまいました。
フランクザッパ~の方では、ミミちゃんとハルくんというカップルの恋愛模様も物語の主軸になっていましたが、『パンダのポンポン』は、パンダのポンポンをはじめ、どうぶつのキャラクター&おいしくってふしぎな食べ物が物語の中心に。そのおかげで、ぐんと軽やかで読みやすく、子どもが楽しめるお話となっている気がします。
魅力的な登場人物と美味しそうな食べ物がつぎからつぎへと登場し、シリーズとしてたくさん出ているとというのも魅力のひとつ。シリーズを読破して、自分のとっておきのお話を見つけるのも楽しいですね。