ロシア絵画…からのロシアの絵本のこと

現在、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中のロマンティック・ロシア展に行ってきました。

国立トレチャコフ美術館所蔵の中から初来日作品を含めた貴重な絵画が観ることができるという事で気合を入れて(ロシアの作品って気軽に観れない雰囲気ありませんか?)出かけてきました。

広大でありながら、どこか冬の厳しさを感じずにはいられない緊張感のある自然の風景画、圧倒されるほど存在感のある肖像画、確かにロマンティック…と感じさせる物憂げな女性を配した抒情的な絵画…と濃密な予想に違わずに重厚な作品の数々でした。

Ⓒロシアの挿絵とおとぎ話の世界
Ⓒロシアの挿絵とおとぎ話の世界

帰宅してからも、どこかロシアの絵画を見た余韻に浸りたくて、『ロシアの挿絵 おとぎ話の世界』(海野弘/解説・監修 パイインターナショナル/刊)を広げ、あの重厚な雰囲気を確実に受け継いでロシアの絵本の美しさを改めて確認。寒い冬に寒いロシアの絵本をじっくり読むのも素敵だな~と思ったので、少しご紹介をしたいと思います。

Ⓒてぶくろ
Ⓒてぶくろ

ロシアの絵本で有名なものといえば『おおきなかぶ』や『3びきのくま』『おだんごぱん』がすぐに思い浮かびますが、私が特におすすめしたいのは『てぶくろ』(ウクライナ民話 エウゲーニー・M・ラチョフ/絵 うちだりさこ/訳 福音館書店)です。

てぶくろの中に動物たちがぎゅうぎゅうに納まるところ、入居者が増えるたびにてぶくろが家のようになっていくところ、繰り返しの面白さ…とお話そのものもワクワク楽しいですが、なんといってもラチョフの挿絵が素晴らしい!とっても寒そうな雪の風景、動物たちのいきいきとした表情、動物たちの着ている民族衣装の美しさ、何度読み返しても見とれてしまいます。

ちいさいおうちではブッククラブ3歳コースの1月の絵本に『てぶくろ』を選んでいますが、子どもから大人までずっと楽しめる1冊です。

ラチョフのえほんは以前は『もりのようふくや』や『ちいさなお城』など他にも色々とおすすめしたいものがあったのですが、最近は出版されているものが少なくなってしまって残念です…

Ⓒロシアの昔話
Ⓒロシアの昔話

色彩の美しさとロシアの昔話にピッタリ合う雰囲気のタチヤーナ・A・マブリナの絵本もご紹介したいのですが、こちらは更に現在出版されているものが少なく…(個人的には『メルヘン・アルファベット ロシア昔話』という絵本がマブリナの魅力をお伝えするにはピッタリだと思っているのですが、現在は品切れ重版未定なのです)

絵本ではなくお話の挿絵になりますが『ロシアの昔話』(タチヤーナ・A・マブリナ/絵 内田莉莎子/訳・編 福音館書店 /刊)は少々お高いですが読み応えも見応えもある1冊です。

昔話は各国にあり、似ているお話も多々ありますがロシアの昔話のひと味違うところは、名前や風習だけではなく、ロシアの昔話にだけ登場するおなじみの登場人物がいるところではないでしょうか。私も小さい頃はイワン、ワシリーサ、バーバ・ヤガー、ペチカ…など、耳なじみのない独特な名前や単語が出てくるだけでワクワクと心を躍らせていましたが、この本にはそんなロシアの昔話の魅力がぎゅぎゅっと詰まっています。マブリナの美しい色遣いと躍動感ある線の独特の重たい華やかさがお話も盛り上げています。

Ⓒねこくんいちばでケーキをかった
Ⓒねこくんいちばでケーキをかった

ユーリー・ワスネツォフ(バスネツォフ)の絵本も素敵です。『3びきのくま』(L・N・トルストイ /文  バスネツォフ/ 絵 小笠原 豊樹/訳 福音館書店/刊)も良いですが、

『ねこくんいちばでケーキをかった』(ワスネツォフ/絵 たなかともこ/編・訳 岩波書店/刊)はロシアのわらべうたとワスネツォフの華やかな色彩とユーモアあるイラストを存分に楽しめる1冊でおすすめです。

ロシアのロシア絵画を観ても感じたのですが、とにかく長く厳しい冬を過ごすの人々の春。夏への想いは格別なもの。その渇望と長い冬を少しでも楽しく過ごしたいという気持ちが豊かな色彩になって、絵本にも表れているのかもしれません。

1月が終わりに近づき本格的に寒くなる2月…暖かい紅茶でも飲みながら、ロシアの本をお家の中でゆっくり楽しんでみませんか。