虹のブランコ #12 

特別支援学校で読む    

「本と子どもの発達を考える会」は現在、「いのちの本展~みんないっしょに生きている」という学校巡回展に取り組んでいます。

<きもち><大切なひとりひとりの命><病気の子どもたち><あなたのまわりのいろいろな人>。こうしたテーマに沿って本を貸し出しています。いのちのことで知りたいことや困ったことがあったら、本が力になれるよ―というメッセージを込めています。昨年は7校、今年も7校のお申し込みをいただきました。

今年はこの巡回展をさらに発展させようと、二つの活動をはじめました。一つは学校の出前授業。クラス単位でいのちの本のブックトーク(本の紹介)をしています。もう一つは、展示する本を使ったおはなしの会です。私たちは11月、ある特別支援学校の全クラスでおはなしの会を開きました。その様子を今回から2回に分けてリポートしたいと思います。

まずは実演する3人が集まり、プログラムの検討です。

この学校でおはなしの会をするのは初めてです。ただ、この学校の教師だった人が私たちの仲間に加わったので、子どもたちの様子がよく分かり、プログラムづくりに大変役立ちました。

実際の会でも、その会員は子どもたちの発言に丁寧に耳を傾けながらお話を読んでいたのが印象的でした。子どものペースで読むことの大切さをあらためて感じました。

                                  

小学部、中学部、高等部と共通してぜひご紹介したいと考えたのが「どんなかんじかなあ」という絵本です。

「ともだちのまりちゃんはめがみえない。それでかんがえたんだ。みえないってどんなかんじかなあって」と始まるこの絵本。主人公のひろくんは、まず目をつぶってみます。すると、「なんてたくさんのおと!」。思わず、「みえないってすごいんだね」といいます。

「もう一人のともだちのさのくんは、耳がきこえない。きこえないって、どんなかんじかなあ」。ひろくんは今度は耳栓で耳をふさぎます。このように、主人公は次々と他の友達の困難さを自分も体験してみようとします。

震災で親を亡くしたきみちゃんにも出会います。しかし、試しに親を失ってみることはできません。

後日、きみちゃんはひろくんにこう言います。「わたしね、いちにちじいっとうごかないでいてみたの。どんなかんじかなあと思って」

ここで衝撃がやってきます。これまで上半身のアップで描かれていたひろくんの全身が、カメラがすーっと引くように描きだされ、ひろくんの体がどんな状態なのか読者に明らかにされるのです。「はっ」とする子、「えっ」と驚く子…。聞き手のこころに小さなさざなみを起こす絵本ともいえるでしょう。

私たちはさまざまな場所でこの絵本を読んできました。大人はよく、「相手の立場になって考えなさい」と言いますが、実はそれはとても難しいことだと思います。けれど、「どんなかんじかなあ」と相手に寄り添って考えてみることなら、誰にでもできる気がするのです。この絵本はそんなメッセージをふわりと子どもたちに届けてくれます。

「どんなかんじかなあ」

中山千夏/文 和田誠/絵

自由国民社 1,500円+税

 

 この本が生まれたのは、作者の中山千夏さんが難病の女の子と出会い、話したことがきっかけです。それぞれが何かしらどうにもならないつらさを背負って生きている。そんなことを深く考える中で、この絵本ができました。表紙に描かれている男の子が、主人公のひろくん。和田誠さんの軽やかでメリハリのあるイラストは、深刻な問題を軽やかに描き出していて魅力的です。